土星探査計画の事故防止に使用されるリスク評価
(「Scientific Computing and Automation(1997年6月)」より承諾の上転載しています.)
Frank Kampas氏はこの2年間,非常に忙しくしてきました.今後も早くても10月6日までは懸命に仕事を続ける予定にしています.その日に,もしすべてが予定通りに進むと,Kampas氏の仕事は無駄だったことになります.
Kampas氏は,世界中の軍隊,政府,民間の通信組織への有数の人工衛星供給元であるロッキードマーティン・ミサイルアンドスペース社のシニアシステムエンジニアです.この数ヶ月間Kampas氏は,土星およびその暗く雲の多い月を探究するカッシーニ計画について米国航空宇宙局(NASA)と共同作業を行う5人のチームの一員でした.しかしすべてがうまく行けば,Kampas氏がこの探査のために行ったことは注目されないまま終わります.
Kampas氏のチームは,確率論的リスク評価を担当しています.その目的は,プロジェクトのリスクを管理し,事故を防ぐことです.「これは探査のすべての局面を見て,すべてが確実にうまくいくようにすることです」とKampas氏は説明します.
NASAのカッシーニ探査衛星の目的は,土星の環の3次元構造と動的挙動を調べ,衛星表面の構成およびそれぞれの物体の地質史を研究し,土星の17個の衛星のひとつであるイアペトスにある暗い物質の性質と起源を究明することです.また,氷衛星(タイタン以外すべて)がどのように土星の磁気圏とインタラクトするのかも研究することになっています.
衛星を探究するために,カッシーニは欧州宇宙機関(ESA)が提供する子探査機ホイヘンスを切り離します.カッシーニ自体は土星の軌道内に留まり,土星の環と衛星を探査します.探査衛星と子探査機からなるカッシーニ宇宙船は,これまで宇宙に送られたなかで最も複雑で大きいもののひとつとされます.すべての推進剤が加わると,その重さは5600キロになります.1,630の相互接続回路,22,000の結線,14キロメール以上に及ぶケーブルが探査機の機能を支えています.
カッシーニは打ち上げロケットのタイタン 4号/セントールで宇宙に運ばれますが,一旦土星に近付くと,日光が減少するため通常の太陽電池による電力システムでは不適切になります.そこで,探査衛星は3基の熱電発電器(RTG)を動力とします.RTGは直流電気を生成するために,プルトニウムの自然崩壊からの熱を利用します.RTG設計は現在,航行中の宇宙船ガリレオおよびユリシーズに搭載されています.
Kampas氏の任務のひとつは,宇宙船上の電源障害およびエンジン異常の可能性を割り出すことです.それゆえKampas氏の職務にはシミュレーションプログラムと確率方程式が欠かせないそうです.スタンフォード大学で博士号を取得したKampas氏は,ほとんどの最終的なプログラムをFortranで実行しますが,それでもWolfram Research(イリノイ州シャンぺーン)の Mathematica は重要な役割を果たしています.
「私は Mathematica をほとんど後処理のために使っています.Mathematica は非常にコンパクトでパワフルなプログラミング言語であり,データをFortranに変換する前にデータを整理したりプロットしたりすることができます」とKampas氏は話しています.Mathematica は少ないプログラミング行で多数の技術計算関数を操作することのできる,記号的コンピュータ言語です.
例えば,Kampas氏は関数の正弦を計算するためにプログラムを書かなければならないことがあります.通常のプログラムでは,完全な計算を実行するために5〜6行必要ですが, Mathematica のベクトル関数を使うとほんの1行で済みます.Kampas氏はFortranと Mathematica の他,Visual Numerics(テキサス州ヒューストン)のPV-Waveといったような可視化用ソフトウェアもよく使っています.
Kampas氏は Mathematica でプログラミングを始めて4〜5年であり,現在はWindows 95でバージョン3.0を使っています.2年前に太陽エネルギー業界を離れロッキード・マーティン社に入社したときまでに,Kampas氏はIBMの社員により開発されたAPLのような多数の類似した言語をすでに使った経験を持っていました.Mathematica は,非常にコンパクトでパワフルという点でAPLのようだとKampas氏は言います.APLは汎用機能と非ASCII記号の使用でもよく知られています.ロッキードチームは,Mathematica の統合的機能を評価して最終的に Mathematica を使うことに決め,少なくとも衛星が打ち上げられるまでは他の新しいソフトウェアを加える予定はありません.Kampas氏は Mathematica が非常に気に入っているということです.
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